子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第9回 福島原発事故と子どもたち

永原郁子
マナ助産院院長

東日本大震災から、福島原発のニュースが気になっています。放射性物質の影響について、いろいろな意見があるようですが、福島県内に友人がいますので、もしも注意すべきことがわかれば教えてください。また、子どものメンタルケアなどに関しても、何かできることはあるでしょうか。(関東在住)

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三月十一日、いつもと変わらない午後を過ごしていた私たちに突如飛び込んできた東日本大震災のニュース。観測史上最大のマグニチュード9の巨大地震と津波による被害、そして福島原子力発電所の放射能漏れの被害。
多くの大切な人たちのいのちが失われ、耐えがたい悲しみの中に私たちは置かれています。いや私たちよりも悲しんでおられるのはイエスさまでしょう。悲しみに暮れる方々の心の扉の前にたたずんで、共に涙を流してくださっているような気がします。
私は十五年前の阪神淡路大震災を経験しています。当初、想像を絶する惨事を前に、先が見えない不安の中に置かれましたが、復興の速さは目を見張るものがありました。
東日本大震災は、規模の大きさ、範囲の広さなど、阪神淡路大震災に比べても被害ははるかに大きいですが、おそらくどんどん町並みがもどり、日常生活を取り戻されていくことと思います。しかし問題は、福島原発から放射性物質が漏れ続け、今なお収束のめどが立たない状態にあることです。
私は放射能のことはわかりませんが、新しいいのちを次代に送り出す助産師として、母子の健康が脅かされないように祈りつつ、事態の行方を見守っている者の一人です。
ご質問に対してですが、まず、なんとしても母子を被ばくから守られなければなりません。被ばくを予防する基本的な方法はよく耳にするようになりましたので、皆さんご存じだと思います。外出時は風向きも考慮し、なるべく肌を露出しない。雨に当たらない。洗濯物は外に干さない。内部被ばくを避けるためにマスクをする。手洗い、うがいをする。汚染されたものを口にしないなど……。これらの基本的なことを守るのは言うまでもありませんが、とにかく原発の状態が日々変化している今、「これなら安全」と言いきれることは、ないのではないかと思います。情報を得て、できる範囲での慎重な対応を考えたいと思います。
また、何が問題なのかが曖昧にならないように気をつけなければならないと思うのです。
例えば、被ばくの影響は、被ばく量と受け手の感受性の違いによって影響が違います。幼いほど感受性が高いので、気をつけなければなりません。校庭の土の除染に際して、子どもたちの受ける放射線量を二十ミリシーベルトと国は基準を決めたのですが、その根拠のあいまいさからもっと慎重に考えるようにとの意見を聞き、なるほどと思います。
またTVでよく「健康にはただちに影響はありません」と言われますが、心配なのは、時間を経過してからの影響です。放射線がDNAを傷つけて、細胞をがん化させることを心配しなければならないのです。
育児中の母親としてできることは、受け手の状態によっても被ばくの影響が違ってくるわけですから、より健康的な身体作りを心がけることだと思います。たとえばオーガニックの食材を使い、添加物の少ない食生活を心掛けることや、感謝と笑顔で免疫力を上げるのも有効かと思います。
大人に余裕がないと子どもたちは大変不安になります。大人が不安だと、子どもはその何倍も不安になります。まだまだ被災地の皆さんは先が見えない不安の中におられると思いますが、すべての大人が子どもに対して「大丈夫だよ。お父さんやお母さん、地域の人や国がちゃんとあなたを守るから、安心してていいんだよ」と言ってやりたいのです。どんなに困った状態になっても、大人は子どもに向かって、笑顔で希望のメッセージを語らなければならないのです。それが、子どもの心を守ることだと思います。
そして大地は動くもの、海は波立つものであることを再認識しなければならないと思います(詩篇46篇2、3節参照)。
地球の表面にある何十枚かのプレートは、内部からの大きなエネルギーを受けて、押しあったり引きあったりしています。神さまは私たちに、温かい大地ではありますが、動く大地を管理するようにとお与えになったのです。ですから私たちは復興に向けて、動く大地の上に作っていいものと、そうでないものを、考えなければならないのではないでしょうか。

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