子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第6回 人生を語る

永原郁子
マナ助産院院長

 現代の育児の特徴

わが国の一九五〇年代から一九七〇年代にかけての高度経済成長は、私たちの生活様式や価値観を大きく変えました。人口は都市に集中し、核家族が増え、地域とのつながりが薄れ、一人の人の幸せよりも全体の利益を求め、学歴偏重の子育てがもてはやされるようになりました。このような中で育つ子どもたちは、本来自然と学べた「人として大切なこと」が学べなくなってしまったのではないかと思うのです。
昔は、「人は家族の中に生まれて、泣いたり笑ったりしながら、支えあい励ましあいながら生きていき、やがてどんな人でも年をとり、共に生きた人たちに別れを告げてこの世を去っていく」ということを、子どもたちは肌で感じながら成長しました。また、子育て真っただ中の親は忙しくても、子育てを一段落したご近所や親戚の人から、子どもは生きる上で大切なことを教わることができました。それは人として「してはいけないこと」や、人として「しなければならないこと」であり、いろいろな人の生き方や人生観に触れることでした。
しかし、現代の子どもたちはそのようなことが学びにくい環境で育ちます。また今なお、存在する学歴偏重の考え方は子育てする親を圧迫し、学力に偏った育児を強いることになり、それが子どもの成長に大きな影響を与えていると言わざるを得ません。学校で学ぶ知識は大切ですが、それと共にそれぞれの年齢に応じて学ぶべき課題が人間にはあるのです。

人生各期の課題

人生を森に例えたら、幼いころはその森で無邪気に遊ぶだけで楽しい日々を過ごしていたことでしょう。けれど、思春期を迎えた子どもは、自分のいる森がどのような形をしているかが気になり始め、自分はどの位置にいて、これからどの方向に、どんな風に歩めばいいのかを考えるようになります。そんな気持ちを満たすためには、森を下から見上げるばかりでなく、上から全体を見る必要があります。
森、すなわち人生を子どもたちに語るときに、人生の各期にはその時々に取り組む課題があるのだと話すことによって人生の全体像をよりはっきりと伝えることができます。また、親としても各期の課題を意識して子育てに励みたいと思います。乳幼児期(〇~一歳、一歳半)は基本的信頼の形成。一歳半~三歳は基本的な日常生活の習得。三~五歳は協調性を学ぶ時期。学童期は学習によって知識を得たり考え方の習得や達成感を体得する時期。青年期は二次性徴により身体が急速に成長し、それにやや遅れて心や社会性、霊性も成長。成人期は自分自身を社会の中で表現し、社会の生産性に関わる時期。人間関係に広がりと深まりができ、人によっては結婚により次代の命を産み育てるという課題があります。壮年期は社会に対する自己の役割の総決算、後輩の育成、子どもを社会に送り出す時期。老年期においては仕事、家庭での一線を退き、豊富な経験により社会を見守り、求めに応じて助言。そして、人生最後に残された仕事は老い方を示し、人間の最後は死で終わることを自らが示すことではないでしょうか。

死生観を語る

幼稚園などに講演に招かれたときに、お母さん方に閻魔大王やそれに代わる死後の世界を子育ての中で話したことがあるかと聞くことがあります。手が上がるのは大体三割ほどです。子どもはたくさんのことを学びますが、必ず訪れる死について誰からも教わる機会がないのです。
死後のことを考えるということは、死後の問題ではなく、どう生きるかという問題でもあります。そしてそれは、自分の生きている様子を見ておられる方がいるという生き方にもつながります。このような死生観を語れる大人でありたいと思うのです。希望を語る
大人の最も大切な役割は、子どもに希望を与えることだと思うのです。「生きることは素晴らしい」「あなたの将来には希望がある」と。経済が破綻し、政治は混乱し、社会の秩序が乱れた現代だからこそ、子どもたちに希望のメッセージを伝えたいのです。聖書の中には神さまから人類に与えられた希望のメッセージが散りばめられています。
まず、私たち大人が聖書から言葉をいただいて、希望の人生を歩み始めることではないでしょうか。

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