子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第28回 夫に育児に参加してもらいたい

永原郁子
マナ助産院院長

どうやって夫に育児を手伝ってもらえばいいのか悩んでいます。私も試行錯誤しながらやっているのに、全然自主的にかかわってくれないので、ちょっとケンカになったりします。頼んだことはやってくれますし、やりたいという思いはあるみたいなのですが、何をやればいいかわからないみたいです。どうすれば、夫に自主的に育児に参加してもらえるようになりますか。あと、どんなことを頼むのがいいのでしょうか。夫にも、もっとかかわってもらいたいです。(二十代女性)

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育児は大変
初めての育児でしょうか。ママの一生懸命なようすが伝わってきます。私は日頃、子育て中のママたちと接しますが、子どもを授かるまでは、自分の時間は自分のものだったし、がんばれば評価を得ることもできたのに、子育てが始まると、自分の二十四時間は自分のものでなくなるし、思い通りにならないことが次々と起こり、一生懸命やってもほめてもらえるわけではない、といった生活に戸惑っておられる多くのママに出会います。本当に子育ては大変です。そんな「一生懸命育児しているママと、か弱い小さな赤ちゃんを僕が守る!」とパパが自覚してくださることが、あなたの悩みの一番の解決のような気がします。

パパがママを支える
私は出産準備クラス(マナ助産院では子育て勉強室というネーミングにしています)で、必ずパパたちにお願いすることがあります。それは、妻が妊娠した時から、出産して、お子さんが一歳の誕生日を迎えるまでの約二年間は全面的にママを支えてあげてほしいということです。パパも働き盛りの年代で疲労困憊の毎日かもしれませんが、この二年間だけは「ここ一番」がんばってほしいのです。ママはこの時期、がんばりたくてもがんばってはいけない状況の時もありますし、心身ともに“いっぱい”の状態なのです。ここでパートナーがすばらしい助け手となってくれたら、確実にパパへの評価は通常の三倍以上の高得点を得ることができます。逆にここで助けてもらえないと、通常の三倍の減点の評価になってしまうかもしれません。それも、それが一生言われ続ける評価になってしまうかもしれないのです。私は準備クラスでこんな風にパパの助けが必要なことを面白くお伝えするのですが、決して大げさな話ではありません。夫婦は支え、支えられる関係です。それが夫婦の絆を強くしていくのだと思います。ここは、パパががんばる時なのです。聖書にも「助ける者」として夫婦関係が書かれています。

パパの育児参加とは
昨今、夫が子育てに費やす時間をグラフにして表したり、〝育メン”ということばがもてはやされるようになりましたが、私はそれらのことに少々違和感があります。パパがおむつを替えたり、赤ちゃんをお風呂に入れたり、あやしたり、食事の片づけをすることは、それそのものが目的ではなく、あくまでも、子育てしているママを支えるための行動であるべきなのです。特に生後六か月までの赤ちゃんは、ママとコンタクトをしっかりと結ぶ時期です。
その後、ママの側にいるパパの存在に気づき、どんどん社会性が広がっていきます。ママがゆったりとした気持ちで赤ちゃんと向き合い、赤ちゃんとの信頼関係を築くことが基本なのです。
ですからパパの育児参加の鍵は、ママが「あ~幸せ!」という気持ちになるようにしてあげることと言えます。
具体的には、①一生懸命子育てをしているママに関心を持つことです。たとえば「今日はどうだった?」と聞いてあげてください。そして、②共感してあげてください。「それは大変だったね」「うれしかったね」「残念だったね」と。「~したらよかったのに」とか「~するからこんなことになるんだ」などの評価はいりません。とにかく気持ちに寄り添ってあげてください。それから、③ほめてあげてください「よくやってるよ。ありがとう」「さすが君だね」その上で、④ママが楽になるように、おむつ替えを手伝ったり、家事を手伝ったり、「何か手伝おうか」の一言をお願いしたいものです。いずれ、パパが直接、子育てに関わる時期もやってきます。それは幼児期に思いっきり遊ぶことや、思春期のイライラの壁になること、そして常に自立を促し、生きる手本を見せることだと思います。

ママへのアドバイス
パパの手伝い方が自分のやり方と違っても、「ありがとう」「うれしいわ」と言ってください。どうしても言いたいことがあれば、「~してくれたら、もっとうれしいわ」と控えめにおっしゃるのがいいと思います。そしてそのようにしてくれたら「ありがとう」をお忘れなく。基本的には、ママの思いと違っても、文句は言わないことがパパの育児参加を促す秘訣だと思います。