夫婦でつくる物語

『リトル・ジョイの もりのおはなし』メニュー
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自分の幸せをどう使う?

 二人の最新作の『はくさい夫人とあおむしちゃん』。このお話に登場するはくさい夫人は、誰もがうらやむ美貌の持ち主。彼女の宝物はうす緑色のドレスと優雅な暮らし。そんな彼女の所に、食いしんぼうのあおむしたちがぞろぞろやって来る。このやっかい者たちを思いっ切り振り落としたはくさい夫人だったが、あおむしたちに次々と襲いかかる災難に、目をそむけることができなかった。「まったく見ていられないざます!」と、仕方なくかばったり守ったりしているうちに彼女の心は大きく変わっていく。そして彼女があおむしたちに与えたものは……。この絵本は、マタイの福音書6章21節の「あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです」という聖書のことばをテーマにしている。子どもたちはもとより、若いお母さんたちにもぜひ読んでもらいたいとノアさんは思いを込めた。

 「子どもを育てるということは本当に大変だと思います。ある時期まで、自分の時間はほとんど持てない。夫婦でディナーに出かけたり、習い事をしたり、おしゃれをしてお友達とゆっくりショッピング……、なんて遠い日の夢。でも、愛するって自分の一番大切なものをあげるっていうことではないでしょうか。愛することはある意味痛むことなんですよね」

 ほんとうにきれいなものって何だろう? そして、ほんとうに価値あるものってなんだろう? と絵本は問いかける。もし母親が、自分の時間を、またきれいであることを犠牲にして、子どもにすべてを与え尽くしたとしても、それはなくすことではない。イエス・キリストの十字架の犠牲が、いつまでもつづく命を与えたように、その犠牲はむしろ本当に価値のあるものを得る。作品は、聖書の伝えるメッセージによって裏付けされている。

 「神様の視点から、どういうものを伝えていけばいいのかといつも柳川と話しているの。私たちは自分が欠けたところの多い人間だからこそ、こんなふうになれるといいなっていう絵本を作ります。そして読んで下さる方たちと一緒に思いを分かち合いたい」

 人との出会いや、会話など日常に普通に起こる物事をどのように捉えていくか。その捉え方も、二人の作品には現れてくる。柳川さん、ノアさん夫婦は、いままで夫婦の危機を体験したことがないとのこと。でも、それは自分たちの努力によってではない、と考えている。「感謝の持って行き場があるの。毎日仲良く平安に暮らしている。その大きな感謝の持って行き場は神様なんだなって思う。人や言葉との出会いも神様が準備してくれたもの。たまたまそうだったと思うのか、神様がそうして下さったのだと思うのかでは感じ方が違うの。だからその幸せをどのように使えばいいか、よく考えなくてはいけないと思う」(ノアさん)

鶴の恩返しじゃないけど

 絵本だけじゃなく、ノアさんの作品には、一枚一枚、神様の愛を伝えたいとの思いが込められている。

 「子どもたちに、あなたはこんなに愛されているよって、いつも伝えていきたい。例えば、こぐまのジョイがぼろぼろになったウサギの人形を抱きしめている絵、どんなになっても君が好きだよって。そう、私たちには、いつどんな時も愛して、抱きしめて下さる神様がいらっしゃる。それが子どもたちにおくる絵のテーマです」

 一枚一枚の絵に思いが込められているだけに、完成するのには時間がかかる。それでも、ノアさんはものを作るという作業をとても楽しんでいる。

 「でも、描き終わったときはそんなすっごい楽しいって感じじゃないよ」と柳川さん。「アトリエから出てくるとばったーんって倒れてね。だからね、鶴の恩返しじゃないけど、命を削っている感じだね」「そういうのって歳をとると感じるのよ。目はかすむし、肩はこりこりになるし、老けるし」

 命を削ってでも伝えたいメッセージを持っている。それを仕事としていることはすばらしいこと。

はくさい夫人とファーマーさん 「私もそう思います。イエス様の十字架の愛を知って、どうやって神様に応えていこうかと、そのことが先にある。その愛を伝えるために与えられた技術や能力だと思うの。子どもたちに届ける、神様の愛をいっぱいつめこんだ絵本を作らせて頂き、出版にあたっては編集の力、デザイナー、いろいろな方の力を頂きました。すばらしい恵みです!」

 ノアさんと柳川さんは、彼らが生み出したキャラクター、小さなあおむしたちに自分を捧げ尽くしたはくさい夫人と、その傍らで彼女を励まし続けたファーマーさんに重なって見えてきた。

(編集部)