天国へのずっこけ階段 第4回 宣教はキムチ持参で

松本望美
北朝鮮宣教会所属/韓国在住

 韓国に来た年の夏に、教会の人たちと一緒に東南アジアへ宣教旅行をしたときのこと。

 空港に集合し、チェックインする前に、「望美宣教師は、これとこれをチェックインのときに預けてください」と言われて渡されたのは、韓国のラーメン二箱分だった。参加者みんなで手分けしてチェックインしたのだが、ある人はキムチ数キロ、ある人はコチュジャン、ある人は韓国海苔……。

 そして案の定、私たちは訪れた宣教地で、毎食毎食、韓国料理を食べて過ごしたのだった。朝から韓国の即席ラーメンを食べた日もあった。「経済的に浮かすために、こうして持っていくのだな」と考えていたのだが、そうではなかった。

 自分が韓国に住むようになってから、日本へ帰ったり、また他の国に行く機会が増えてきたりすると、韓国人の気持ちがよくわかるようになった。「キムチが切れてくる」のだ。つまり、あのからくて刺激のある料理が恋しくてたまらなくなる! 私も彼ら同様、キムチにやられてしまった……。

 ある国に行ったときには、教会にビニールシート一枚を敷いて、みんなで川の字になって寝た。教会内はシャワーとトイレが一緒になっていた。シャワーカーテンがないところでシャワーを浴びていると、突然、「使ってもいい?」と言って女性が入ってきて、私が「ええっ!」と驚いている間に用を済ませて出て行き、さらにもうひとりが入ってきたこともあった。

 宣教会でアメリカに行ったときには、いろいろな人から「うちにぜひ泊まってください」と言われた。「ぜひ! うちには部屋がたくさんあります!」と、そう力強く言ってくださった方の家に行くことになった。

 しかし、到着してみると、小さな部屋二つと狭いリビング、そしてキッチンしかなかった。そこに、家主である三人と私たちの宣教会のメンバー四人が納まらなくてはならなかった。その夜、私は冷蔵庫と流し台の間で寝た。

 韓国人クリスチャンは、前の晩に、するめなどを食べながらどんなに遅くまで話していても、早天祈祷にはきちんと起きてくる。女性たちは、ばっちりメイクまでできている。私は、夜中のするめも無理だが、そんな次の日の早天祈祷はかなりつらい。

 彼らは、本当にタフだ。世界地図上に韓国人宣教師がいない国はないといわれている。このタフさがバネになって、全世界に散っていくのだろう。

 「宣教旅行をするとき、韓国人はキムチ持参ですものね」とある牧師と話していたら、彼は真面目な顔をして私に聞いてきた。

 「望美宣教師は、宣教旅行のとき、梅ぼしを何キロ持って行きますか?」