ルーク19(ナインティーン)のスピリットを探る 後半

受洗前に伝道して友人と一緒に洗礼

 渡辺さんの卓越した“伝える能力”は、若い頃からその片鱗を見せていた。渡辺さんが受洗したのは十六歳の頃。ひとりの伝道師から福音を聞き、信仰に導かれた。長野にあった家の近くには教会がなかったが、十人集まれば伝道所が開設できると言われた。

 「それで、受洗前でしたが友人十三人に伝道しました。そのとき、土砂降りの雨でしたが、友人に『じゃあ、神様に頼んで雨を一時間以内にやませてみて』と言われ、祈ったら本当に快晴になりました。それで、みんなびっくりして伝道集会に行き、全員救われて伝道所もできました。それは私でなく神様が働いてくださったんですね」。

 その後、成人して教会にあまり行かなくなった時期もあった渡辺さんだが、信仰へと導いてくれた伝道師と再会し、「君は伝道の賜物を持っているのに、営業という仕事だけに使っている」と言われて、再び主の前へと進み出ることに。それから数年後、主は渡辺さんに、ルーク19の志を与えることになる。

伝道にも役立つ営業のエッセンス

 副社長の飯島さんは、渡辺さんの営業スタイルを天才型と評する。飯島さん自身は努力型だ。渡辺さんの天才的技術を徹底的に研究し、自分のものにするだけでなく、マニュアル化して組織全体のレベルアップにもつなげている。

 そんな最強コンビの営業極意が著書『バイブル百貨店』にも書かれている。それは一般の人がコミュニケーション力を磨くのに役立ちそうだ。例えば相手を説得するときに最も大切なことは・。

 「相手の中にあるものを引っ張り出すこと」だと渡辺さんは語る。

 「たとえばある人が一冊の本を前にして、買う必要は特にないときに“買ってもいいかな”という気持ちをいかに引っ張り出すか。イエスもノーもその人の中にあるんです」。具体的には「まず聞く態勢を作ること」だという。

 「相手の心に悩みや、他の関心事が詰まっていると、どんなに良いことを言っても入らない。まずはどんな状況なのか、相手の興味がどこにあるのかをリサーチする。そうすると“このボタンを押せばイエスになる”というポイントが少しずつ分かるんです。聞かないと相手のことは分からない。相手のことが分からずにものは売れないですよ」。そして飯島さんはこう続ける。

 「その人の問題点を感じたら、『それをどうしたいですか?』と問いかける。その解決のお手伝いとして、私が扱っている商材が、どうお役に立てられるか提案していきます。それが一冊の本だとすれば、その本は今のあなたにこういうメリットがありますと語ります」。

 抜群の営業成績は、何かを押しつけるスタイルからではなく、相手の話を聞き、心が自発的に動くことを促す中から生まれていた。これは福音を伝えるときにも通じる極意になりそうだ。

カッコいいクリスチャンが世の若い人の指標に

 サンプル百貨店というインターネットビジネスで成功することは、仕事の面白さや利潤の追求を超えて、伝道につながるとお二人は考えている。

 「神様から言われたとおりに正しく行動する成功者がどんどん起こされていけば、その人は若い人たちの指標になり“クリスチャンってカッコいい! ああなりたい”と思うようになるじゃないですか」。そう渡辺さんが話すのも、この仕事が献身の思いの中で行われていることの証しだ。

 お二人は、この先、日本で多くのクリスチャンが生まれることを強くイメージしている。その先に、具体的な夢も抱く。

 「東京のど真ん中に一万人くらい入れる教会を作るためにお役に立ちたいですね。そこはまず、クリスチャンでない人でも入りやすい場所にしないと」と渡辺さん。三年前、会社創業と時を同じくして受洗した飯島さんも「日本が大きく変わる時が来ます。今はそのための準備の期間だと思います」。

 サンプル百貨店というビジネスモデルは、アメリカやアジア各国でも特許出願中だという。いずれみこころが示されれば、海外進出も行いたいと計画している。神様がルーク19にお与えになったスピリットを通して何を行われるのか、これからもちょっと目が離せない。