ブック・レビュー 苦しんできた過去を乗り越え、霊的にもいやされるために

 『過去の傷がいやされるとき』
小嶋由貴子
医療法人社団 小嶋医院 理事・薬剤師

私はかつてDV(ドメスティックバイオレンス)の被害に遭い、重症のPTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病に罹患し、数年、闘病生活を送っていたことがある。心身の病は、さまざまな治療やセラピーを通して克服でき、今では、DV被害者の支援をさせていただけるまでに回復した。だが一方、クリスチャンとしての霊的ないやしは、私にとって克服し難いままだった。
今回、この書と出会い、約四百五十頁に及ぶ分厚い本だが、一気に読みたくなるほど引き込まれていった。読むにつれ、自分の葛藤や苦悩が分かってもらえるという安心感を得、さらに、苦しみから抜け出すための原則や秘訣、考え方も具体的に書かれている。それは本当に丁寧で、できるレベルから段階を踏んでアドバイスされている。
DVや性虐待、児童虐待という大きなトラウマ(T)はもちろんのこと、生命の危険はなくても心の傷として残る小さなトラウマ(t)を体験してしまうと、信仰面にも多大なダメージを受けてしまう。人に傷つき、そして、神に傷つき、人との関わりを遮断するようになり、悪循環に陥り、希望を見失ってしまうのである。
私はこれまで多くの〝心の傷のいやし”に関する本を読み、また、大学院でトラウマを研究していたこともあって専門書も読んできた。この書は、本当に〝信仰”と〝回復・いやし”の両方のバランスがとれている書だと思った。この書のたくさんのみことばを通して、神様の偉大な力や大きな愛を知り、そして神様は、私たちのいちばんの理解者であり、カウンセラーでもあることを再認識させられる。
二十一日間、一日一章ずつ読む中で、じっくり自分をみつめ、また神様に心の内を探っていただき、苦しんできた過去を乗り越え、新しい豊かな人生へと変えられる転機となることでしょう。

「だれでもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である。古いものは過ぎ去った、見よ、すべてが新しくなったのである」(コリント第二 5・17/口語訳)