ブック・レビュー 苦しみの中で、空を見上げて

 『 空が微笑むから 』
大和 弘子
福音交友会 京都聖書教会員

「私には空を見ながら祈る癖がある。乳ガンで入院中も、窓から見えるわずかな空を見ながら、よく神様に語りかけたり賛美したりしていた」(一六五頁)。本書は、そう語る坂直子さんの希望に満ちた証しです。
坂さんとは京都レディースランチョンの奉仕を一緒にしていました。坂さんから、就職して間もなく乳がんになり、その後も転移していく闘病の経緯をはじめて伺った時は非常に驚きました。聡明で明るく、素敵な笑顔の彼女は健康そうに見え、凄絶な闘病をしていたとはとても想像もできませんでした。
現在、坂さんは、在日大韓京都教会で御主人の朴(パク)龍洙(ヨン ス)牧師と共に奉仕をされています。ヨンス先生が神学生の時に、お二人は出会い、直子さんのがん再発が続く中で、婚約・結婚・出産へと導かれながら教会に仕えてこられました。お二人の歩みは、生きて働かれる神様の奇しい導きを証しするものです。本書は、『百万人の福音』に「きざまれた足跡」として連載されていたものです。そこに、連載では触れられていないヨンス先生の半生も、折々の写真と共に織り込まれました。
厳しい状況の中でも、滲み出るユーモアに心和んだり、あまりにも重い苦悩に触れた時には涙が止まらなくなったり、いきいきとした文章に引き込まれて一気に読んでしまいました。
「なぜ私が?」と坂さんは何度も問います。でも、「なんでそんなに頑張れたん?」と尋ねられ、「私を愛してくださる神様と出会えたから」と答えられる直子さんは、神様が共に歩んでくださる喜びを体験されたのです。
私たち誰しも「神様、どうして」と叫ぶ時があるのではないでしょうか。直子さんのひたむきな心そのままの文章に触れられる時、私と同じように勇気づけられ、励ましを受けられることと信じます。空の向こうから神様が微笑んでおられるように、直子さんと共に感じられるかもしれません。坂直子さんの生きた証しを、お読みになられることを心からお勧めします。