ブック・レビュー 聖書の示す天国を本格的に論じる


大久保八城
グレース宣教会 学園前グレースチャペル牧師

菊池寛の『極楽』に代表される大方の日本人の天国観だけでなく、西洋人にとっても天国は退屈な所、つまらない所、魅力のない所と考えられているようです。
天国は現実味のない期待感の持てない所という今日の天国観に対して、聖書の示す天国を本格的に論じているのがこの本のもととなる同じ著者による『HEAVEN』です。
『ほんとうの天国』は、この『HEAVEN』の縮小版ではありませんが、それから選び抜かれた箇所に加筆され、五十日間のデボーション用に編集し直され、読みやすくされ、質問や祈りが加えられた、新しい装いの本となっています。読者の状況に合わせて、日数や順序に関係なく、どこからでも読めるように工夫されています。一日の分量も八ページ程度です。しかし、読みやすいからといって学術性に乏しいという訳ではありません。論拠の裏付けとなる聖書箇所と文献の出所が明確にされていて検証が可能です。「はじめに」において、「いつの日か神は、罪によって堕落したものを元に戻し、新しい地と呼ばれる場所に天国を招きおろしてくださる」と著者の主張の基礎を明示します。
第一~六日では、天国に行く目的や確信等、基礎的重要課題を扱い、第七~十二日では、死んだ直後に行く中間状態の「現在の天国」=パラダイスと「未来(永遠)の天国」=「新しい地」の違いを明らかにします。第十三~五十日では、「未来の天国」について、なぜ新しい地なのか、千年王国との関係性に触れながら詳細に論じていきます。さらに天国は退屈な所か、天国で何をするのか、働くことや食べることはあるのか、天国でペットに会えるか、笑いがあるか等々、私たちが抱く素朴で切実な数々の天国の疑問への答えとなるヒントを提示します。
「おわりに」では、天国の素晴らしさを再確認しつつ、天国が素晴らしいからといって、そこに行くために近道はしないでと記します。そして、「私たちの地上での生活は、天国の備えをさせる訓練所である」と語ります。私たちを待つ世界(永遠の天国)に照らして今を生きよう、今という時を聖書的に、楽観的に生きようと動機づけられる書です。

『ほんとうの天国 
―永遠の世界を想う50日』
ランディ・アルコーン 著
佐藤知津子 訳
四六判 1,800 円+税
いのちのことば社