ブック・レビュー 聖書の世界をダイナミックに

 『『小畑進著作集』第1~4巻』
野寺博文
日本同盟基督教団 赤羽聖書教会牧師

小畑先生は神学校の恩師です。東京基督神学校(現東京基督教大学大学院)の卒業生は多かれ少なかれ、先生の説教スタイルに影響されたものです。先生の説教は修辞的で、生き生きとした聖書の描写は聞く者を圧倒します。のみならず、博学な知識が総動員され、聖書の世界がダイナミックに説き明かされます。針小棒大の感が否めぬ部分もなくはないのですが、テキストと真正面から向き合うことを先生から学びました。このヨハネの黙示録講解は、得意の一節説教で、丁寧に解き明かされています。一節説教については、釈義の準備が手抜きとか、聞き手が飽きるなどの批判もあります。ですが、説教の参考にするには、余計な話がたくさん入っているほうが助けになり、勉強になります。
私が感心したのは、「大バビロン」崩壊によって泣き悲しむ「商人たち」の解釈です。先生は岡倉古志郎の名著『死の商人』も引用しつつ「商人たち」を釈義しています。
「『風と共に去りぬ』のレッド・バトラー。そのモデルと思われるモルガン財閥のボス、ジョン・ピアモント・モルガン。ヨーロッパの怪商、潜水艦売りのサー・バシル・ザハロフ。……これらは、それぞれの母国……以外の国に武器を売り込んで巨利を得ました。……もとより、彼らも〈愛国心〉を説きます。……傘下におさめているマスコミや、媚薬をかがせている政治屋を通して、国家の危機を説き、愛国心を煽ります。国を富ませよ。国は守らざるべからず、と高唱します。産業貿易や軍備を制限しようという者があれば、例の悪口で葬ろうとします。曰く『売国奴』、曰く『非国民』、曰く『空想家』。……東京と、幾多のバビロンは黒煙をあげて滅びてきました。しかし、巨大商人たちは生きのびました。国敗れ、都は黒煙をあげながら、彼らは生き残り、勢いを盛りかえし、世界に売り込み、贅沢にさせ、堕落させ、かつは狂暴にさせてきました」(第四巻 七五頁)
人のいのちを食いものにして利益を貪る「死の商人」は、いつの時代にも各地で戦争を起こし、日本でも原発を普及させて巨額の利潤を貪ってきました。小畑先生にはそれが見えておられたのだと知って、少しホッとしました。

『小畑進著作集』第1~4巻
ヨハネの黙示録講解Ⅰ~Ⅳ

A5判 
第1,2巻 各5,040 円
第3,4巻 各4,830 円
いのちのことば社