ブック・レビュー 教会が知らず知らずのうちに変質していないかを知るために

 『霊の戦い―虚構と真実  』
奥村 敏夫
札幌バプテスト教会牧師

ウッド先生とズィヴィー先生は、私が非力ながら約二十年間、マインドコントロールに苦しむ本人やそのご家族とのカウンセリングに携わる過程で、時折お会いしていた方々です。我々日本人の間でもデリケートで捉えにくい、精神的・心理的な部分に至るまで、深い信仰的・人間的な洞察によって、おびただしい人々を暗やみから救うために分析し、行動して来られた方として敬意を覚えます。
このたび刊行された本書は、まさに待望の書とも言うべき本で、特に近年の〝教会のカルト化”の危険性の問題を考える上での必読書になるに違いありません。
以前、私どもの関心は、主に異端的カルト問題でした。しかし残念ながら、今日私たち教会につながる者にとっての課題は、私たちの愛する教会が知らず知らずのうちに変質し、カルト化していく可能性があるということだと、気づき始めました。中でも、本書で語られている〝霊”の理解や、牧師らのリーダーシップのあり方などについての具体的な警鐘は、優れた〝試薬”となり、〝特効薬”になるかもしれません。
私の周辺でも、身近な親しい教会で、牧師の交代とともにトラブルが起こり、やがて心ある人は裁かれて去らざるを得なくなり、その牧師とイエスマンたちだけが残るという悲しい出来事がありました。「主にのみ従う」のではなく、目の前のカリスマ性のあるリーダーに絶対服従するという状況は、確かに気をつけていないと、どの教会にも起こり得ることです。真面目さと従順さが、「誰に対してか」という聖書的な問いを抜きにすると、気づかぬうちにモンスターを造り上げてしまうことになります。
本書を読めば読むほど、愛する教会の体質や健康度を思わずにはいられません。私たち牧師も自らを省みるよき鏡となることでしょう。
また同時に、信徒の方々にとっても、尊敬と神聖化をはき違えていないかや、「聖霊」理解が本来聖書に基づくものであるかを見極めていく上で、この本は大切なワクチンとして働くに違いありません。