ブック・レビュー 慌ただしい日々を〝シンプル”に生きるための祈り

 『シンプルに生きるための1分間の祈り』
ホープ・リダ 著
廣橋麻子 訳
イムマヌエル綜合伝道団 インマヌエル深川教会牧師

著書のホープ・リダさんは、オレゴン州ユージン在住の人気作家です。彼女の数ある著書からこの『シンプルに生きるための一分間の祈り』が翻訳され、出版されました。淡い色のカバーには繊細な刺繍のイラスト。がんばっているだれかにプレゼントするのに最適な一冊かもしれません。
しかし、優しい表情の装丁に、よい意味で裏切られるような、葛藤と戦いに満ちた信仰の祈りが、次から次へと続きます。ひとつずつの祈りは「一分間」で読むことはできても、「一分間」でサクッと消化できるようなものではありません。
構成としては、「生きる意味」「豊かさについて」といった二十三の表題のもと、それぞれ四つずつ祈りがしたためられています。見開き二ページでひとつの祈り。右ページの半分くらいに、みことばが記され、そのみことばに呼応するように祈りが続きます。
実は、この本を最初に読んだ時、書名の「シンプルに生きる」ということばが、しっくりときませんでした。「シンプルに生きる」という願いと、読み進むほどに祈りの文面から推察される、著者のとても煩雑な日常生活、複雑な思い、混沌とした現実とが折り合いがつかないような印象を受けたからです。私は心の中でつぶやきました。
「ちっともシンプルじゃない……」
もう一度、気持ちを新たに読み始め、なるほどそうかと思いました。「いつからだろう、こんな慌ただしい朝を迎えるようになったのは。でも、たった一つの選択だけではじまれる朝が、前はあった。あなたと時間を過ごすという選択。……神様、もう一回はじめからやり直させて。あなたが今ここにいて、一つの道筋を指さしていることがわかるようにしてください」(九頁)。
チョイスがいっぱいで、煩雑で複雑で、心が揺れ動き混沌としているからこそ、神様ご自身が指さしてくださる道を選びたい、そのように「シンプルに」生きたい。この祈りが、私たち一人ひとりの祈りとなりますように。