ブック・レビュー 大切な人へことばの花束を……


久場政則
保守バプテスト同盟・北信カルバリー教会牧師

前作『ひと言でいいのです』に続いて、吉川直美さんによって編まれた珠玉のことば集第二弾。
ドラえもん、長田弘から老子、そして小学三年生の女の子のことばまで、色とりどりの花束のように集められています。ひとつひとつのことばには、吉川さんの解説がつけられていて、味わい深いものになっています。
金言集などよくあるものは、ことばの重みがイメージされますが、この本は、ことばの息吹というか香りというか、さわやかさと真実さが後味として残ります。編者が「おわりに」でも書いているとおり、「いのちの記憶が、きぼうのたねとして引き継がれていくという期待」が、そこかしこに蒔かれているからなのかな、と思いました。
童謡「ぞうさん」のよく知られたフレーズ、「そうよ かあさんも ながいのよ」を取り上げているところからは、「そうだ。自分は自分でいいのだ」と安心し、ハンセン病患者のために生きたダミアン神父のことばからは、「こんな尊さに生きてみたい」と思わされます。
児童文学者の灰谷健次郎さんは、教師を辞めたあと、子どもたちの詩のストックを海辺で何度も何度も読み返していたと知り、子どもたちのいのちあふれる詩心が彼の人生も造り変えたのだと感動しました。
簡潔で、急いで通り過ぎようとすれば真の意味には気づかないような、そんなことばの数々ですが、込められているその人その人の「いのちの記憶」に触れていくうちに、いつの間にか自分の心の何かが動き出しているのに気づきます。そして、私もほかのだれかにきぼうのたねを蒔きたくなってくるのです。
四十二篇の編まれたことばは、どこからでも読むことができます。ホッと一息つきたくなったとき、一筋の光が見たいとき、手軽に手に取ることができる一冊です。
そして大切な人にプレゼントしたくなる、贈り物としてもいい本だと思います。