ブック・レビュー 壮大なファンタジー小説で聖書を伝える機会へ

 『スタート・アゲイン  』
サムエル
歌手

『スタート・アゲイン』を読み終えた後の素直な感想は「おもしろい!」の一言だ。本全体を通して力強いメッセージを伝えつつも、同時に娯楽的要素も兼ね備えた作品である。このような作品が、今までの日本の福音派にあっただろうか。
今年は多くの著名なゴスペルミュージシャンたちが次々と新譜を世に送り出した。僕自身も過ぐる三月に四年ぶりのアルバムをリリースした。そのリリースにあたり、制作の段階で『スタート・アゲイン』のイメージソングを書くオファーを受けた。
オファーを受けたときは、とても不思議な気持ちだった。実のところ僕は、偶然にもすでにこの作品の原稿を読んでいたのだ。まさか自分がイメージソングを書くとは夢にも思わず、ただこのファンタジー小説にのめり込んでいた。物語の壮大なスケールと、あえて直接的な表現を避け、慎重にことばを選び、とてもわかりやすく書かれた作者の熱いメッセージに、ただただ心が揺さぶられていた。そんな作品のイメージソングを頼まれたことは光栄であった。
物語の内容もさることながら、僕は同じ表現者として、ヨナさんのメッセージを伝えるその方法にも大変共感した。それはこの作品が、今まで一度も教会にかかわったことがない人にとってキリスト教色が濃過ぎず、自然に手に取ってもらえるものだということだ。そして、物語を読み始めると、その世界観にどっぷり浸かりながら作者が本当に言わんとしているメッセージが心の奥深くに響いてくるのである。決して敷居が高くなく、芸術的に劣ることなく、万人に受け入れられるゴスペルの伝え方。そんなヨナさんのゴスペルを伝える方法に何よりも共感を覚える。
最後に、この作品がヨナさんの初の作品であるというのを覚えてもらいたい。これからのヨナさんの働きに多くの可能性を感じる。
ぜひこの機会に、たくさんの人に『スタート・アゲイン』を手にしてもらいたい。そしてこの本が、皆にとってより良き伝道の方法、また機会になればと思う。