ブック・レビュー 十一人十一色のビジネスと導き


田島実
単立 神の家族主イエス・キリスト教会牧師

現役で活躍されている十一名のクリスチャン企業家と、牧師でありビジネス界に影響力を持つ中野雄一郎氏との対談を記録した本書は、これまで中野氏が執筆された『聖書力』『ビジネスを元気にするバイブルパワー』の展開とは異なっており、中野氏が聞き手に徹して、企業家たちが主人公となり、それぞれの職業観・人生観が浮き出される個性的な内容である。
本書の帯タイトルには「事業の中で成果を得るための十一例」とあるが、成功の法則を説くものではなく、それぞれが主から与えられている志と賜物を具現化している「証し集」というようなものである。それゆえに、十一人十一色のビジネスと導きがあり、多彩で豊かな主の恵みを味わい知ることができる。
何か特別なことを覚えてビジネスに生かすというよりも、信仰者のビジネスマインドに触れて感動し、主に期待を膨らませ、仕事に対するモチベーションを高められる、そのような励ましが受けられるであろう。
クリスチャンにありがちな信仰の話から入るのではなく、起業の経緯や就職動機などから始まり、会社がどのように発展したのかという歴史観、どのようなポリシーを持っているのかという企業理念が語られ、信仰者でない人でも気軽に読み進められる内容である。決して順風満帆ではない経営に、激変の現代社会にどのように対応していったのか、経営研究としても興味深いものであるが、その背後にはみことばに対する信仰、絶え間ない祈り、従業員に対する信頼と愛が、大きな土台となって、経営を安定させていることが感じ取れる。副題の「天命に安んじて人事を尽くさん」という表現がピッタリしている。もし身近にノンクリスチャンの企業家がおられたら、プレゼントにお薦めしたいし、クリスチャンにもぜひ読んでほしい一冊である。
僭越ながら、私の長兄である田島幸児(田島建設代表取締役)も本書に掲載されており、そのことも含めて楽しんでもらいたい。