ブック・レビュー 個人の信仰生活の中で詩篇をひも解く


橘内明裕
ときわ台キリスト教会牧師

皆さん、「注解書」って、読んだことおありでしょうか。そもそも、「注解書って何?」という声も聞こえてきそうです。平たく言えば、「聖書の解説書」ということでしょうか。このたび、『ティンデル聖書注解 詩篇1―72篇』が出版されました。これは、私たちの信仰生活に身近な「祈りや賛美」について書かれている「詩篇」の「前半」の解説です。
詩篇を読んでいて、難しい言葉や独特の用語の意味が知りたい、というときが多いのではないでしょうか。そうすると、最初から最後まで「通読」という感じより、個人の信仰生活の中で詩篇をひも解くとき、聖書の傍らに注解書を置いて、何かわかりにくい、あるいはさらに意味が知りたい、と興味が出た部分について、開いて調べるという感じの使い方でしょうか。
例えば、あなたが詩篇23篇をお読みになっているとします。すると、「死の陰の谷」という言葉が出てきました(4節)。さて、これはどんな意味? そう思って注解書を開くと、一五五頁で、「暗黒の『谷』」という意味合いがあることがわかります。また、日本に暮らしていたら、羊飼いが持つ「むち」と「杖」ってどんなものだろう、と思いますが(同節)、それも、「羊飼いの武器であり道具である」という答えを得ることができます(一五六頁)。そればかりか、冒頭に「緒論」という五十七頁にわたる充実した詩篇全体の解説があるので、「詩篇とは」ということを学ぶのに、とても役に立ちます。詩篇の研究の歴史についても、有名な研究家の名前もたくさん紹介されていて、しっかりとまとめてあるので、そのようなことも見渡せます。
この注解書は、「詩篇って何? 何が書いてあるの?」とみことばに好奇心いっぱいの方に特にお薦めです。訳者あとがきにも、旧約全体や詩篇の研究の動向についての短いまとめがあるので、それも大いに参考になるでしょう。訳者は筆者が神戸ルーテル神学校で学んでいた頃の校長先生です。懐かしい思いで読ませていただきました。大著をお一人で訳されたことに敬意を表します。