ブック・レビュー いのちが一生懸命俺を生かしてくれている

 『いのちより大切なもの』
安藤啓子
日本同盟基督教団 世田谷中央教会伝道師

このたび『いのちよりも大切なもの』のタイトルで出版された星野富弘さんの詩画の世界は、人の心に希望をもたらしてくれる小さな花からのメッセージで始まる優れものです。この本を読んで、3・11東日本大震災による自然の脅威の前に打ちひしがれ、筆がもてなくなった富弘さんが、震災に遭った人々の希望の笑みの中心に梅の花があったと知り、もう一度、絵を描き始めたことを知りました。
そこから生まれた数々のことばは優しく感動的でした。その一つが、第三章「あの日からはじまった明日へ」の「『そればかりではなく患難さえも喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出す……』(聖書)私のうす暗い明日に、かすかな光がさし込んでくるような気がした。今のこの苦しみは、苦しみだけに終わるのでなく、豊かな人間性や希望につながっているというのである」(八四頁)。
このことばが、実にリアルに私のたましいに響き、この感動を多くの人と共有したいと思いました。
そんなとき、礼拝後に、病弱なお母様をずっと看病して支えているご婦人から「祈ってください」と頼まれました。
「実は、突然に姉が亡くなり、神さまを知らない母がひどい落ち込みようで、自分はどうしてあげたらよいのかわかりません」とのことでした。とっさに「主よ!」と御名を呼び祈り求めたとき、目の前の書籍販売コーナーにインパクトのあるこの題字を見つけました。
すぐに本を買い求めて渡し、「星野さんが、自分の努力ではなく、『いのちが一生懸命俺を生かしてくれている』(六三頁)と気づき、苦しみを乗り越えたことをつづるこの本は、神様がお母様の深い悲しみと失意に苦しむお心を慰め励まし、生きる力を取り戻す活力として用いてくださると信じます」と伝え、心を一つにして祈りました。祈り終えた私たちの心には、主の平安と希望が与えられていました。
だれでも行き詰ったり得体の知れぬ不安や悲しみに打ちひしがれそうになったときは、ぜひ、この本を手に取って見ていただきたいと思います。