ブック・レビュー 『若者は朝露のように』
思春期の子どもと成長する

『若者は朝露のように』
鈴木 茂
保守バプテスト同盟 仙台聖書バプテスト教会牧師

思春期は神様からの贈り物

 現在、二人の思春期の子どもを持つ親として、本書は神様からの贈り物のように感じられました。

 著者の重要な意図は、本書の副題「思春期の子どもとともに成長する」に含意されています。神は思春期を、人格形成や信仰の確立のためになくてはならない季節として、また親が子どもと共に成長する大切な時として与えられたのである、と言っています。

 人生の現実を美化せずに、思春期の特徴やこの時期に家族の中で起こりうる様々な現実や現象などを、自らの経験もおりまぜて書きつづっています。「順調な思春期」などはなく、「思春期に適応していく過程は、骨が折れ、時にはやかましいもの」なのです(一二頁)。

 クリスチャンホームだからといって平穏無事な家庭生活が保証されているわけではありません。思春期の子どもを持つどの家族にも、様々な問題が突然起こるのであって、驚くことではないのです。

 本書の優れた点は、著者が、多くの親にとって悩ましいこの時期を神の計画の視点からとらえ直させてくれるところにあります。苦戦や苦闘の渦中にある多くの家族にとって、希望の光となる大切なメッセージが随所に輝いています。

 神は、子どもたちの思春期に親を巻き込むという意図を持っています。そして、人間にとって最も重要な課題である「キリストにある成熟」にあずからせて、人格と人生の再創造のわざに参加させてくださいます。神の恵みは、苦しみやとまどいを消し去るものではなく、キリストにある成長を助け促すものであり、そういう意味において、「思春期は神からの贈り物なのです」。

 本書は、ただの「思春期の子を持つ親のための子育て」の本にとどまらず、今までの自分の人生の旅路を、新たに見直す大切な機会を与えると思います。ですから、現在思春期の子どもたちを持つ親だけではなく、自らの救いと真剣に取り組みたいと願っているクリスチャンにとっては必読書であると思うのです。