ブック・レビュー 『種をまく人たち』
――開拓伝道から世界宣教へ

種をまく人たち――開拓伝道から世界宣教へ
石川 弘司
日本同盟基督教団 中野教会 牧師

二十一世紀のあり方を求めて

 このたび『種をまく人たち――開拓伝道から世界宣教へ』が出版されました。著者は、戦後の日本の教会の様子をよく知り、そして中心的に活動し、指導してこられた泉田昭先生です。二十一世紀を迎えて、新しいあり方が求められている今、実にタイムリーな出版であると思います。

 日本の教会の戦後の歩みから、開拓伝道者たちの紹介からはじまり、開拓伝道、そして「地の塩」「世の光」としての社会の使命、さらに終末の緊迫感をもって世界宣教へと、教会のあるべき姿を著者自らの体験を交えて読みやすく記されています。

 本書を読んで第一の感想は、戦後約六十年を経た日本の教会、特に福音主義に立つ教会の歴史観や数多くの宣教団を母胎とする流れがとてもよく整理されているということです。私たちは自らに関係ある教団・教派のことはよく知ってはいても、他の教団・教派との関連はわかりにくいのが現実ではないでしょうか。本書は、日本全体、そのすべてをカバーしているとは言えないまでも、自らのルーツを調べ、比較し、考えるならば歴史の実情がより鮮明になることでしょう。

 これまで「開拓伝道」「教会成長」「世界宣教」といったテーマですぐれた書籍が国内外の専門家によって世に出されてきました。日本の教会も成長のためにと、様々なことを研究し、それらの著作を参考にしてきましたが、必ずしも成功したとは言えませんでした。それゆえあせりにも似た不安感によって、教会成長を数や形、外形的なものを求める誘惑も大きかったのではないでしょうか。

 ともすれば軽視されがちな「幼子」「家庭」「高齢者福祉」といったテーマにも多くのページを割き、本当の成長にはこれらの問題にしっかりと取り組まなければ、どんなに大きなヴィジョン、良い計画も実現できないという警告が秘められているように思います。

 自らの現状を知り、よく考えながら、新しいあり方を求める人には、実に味わい深い良書となることでしょう。