ブック・レビュー 『彩りことばのおくりもの』

『彩りことばのおくりもの』
小林 碧
日本基督改革派教会・白石契約伝道所会員 和紙染色画考案作家

弱った魂にさりげなく寄り添い、冷えた心をあたためる

 一つの言葉が奥深い書によって表現される時、伝達手段としての文字が不思議な力を発揮いたします。

 『彩りことばのおくりもの』を私が手にした時、弱った魂にさりげなく寄り添うもののように感じられました。友禅を思わせる優しい色使いと筆遊びが冷えた心をあたためます。

 病床にあって重い聖書を開く元気も失せた友のことが一瞬脳裏をよぎりました。「これなら手にとって楽しめるかも知れない」と。

 神様は著者に〈美しいものによって伝えたいことがある人生〉を与えておられます。

 「あとがき」によれば著者は、井戸に落ちて三歳で命を失うところを祖父に助けられ、彼のあたたかい励ましの中で六歳から本格的に書を始めました。この書によって良い人生を送ってこられたという実感をお持ちです。

 子どもは生まれ育ちを選べませんが、幸いなことに著者は日本古来の伝統文化を伝える呉服屋の娘として、感じる心が豊かに育まれる環境で成長しました。

 日本の着物は他に類のない美しい民族衣装であり、日本人の美的感覚もまた高く評価される所以でもあります。

 生育環境が人に与える影響は計り知れないことを思えば、書に彩りを添えるようになったのも自然の成り行きなのかも知れません。

 長く墨色の世界に居られた著者が聖書を知り、主に出会い、真の自由を得て人生がさらに彩り豊かなものへと導かれていることが伝わってまいります。

 書と共に歩んでこられた方が書いた聖句もさることながら、「筆遊び彩書」と名づけた一文字絵も創造的で楽しいものです。

 本書は描き方と画材についても紹介しておりますので、お手本として用い、自分の腕を磨いて色紙やハガキに描いてみることもお勧めしたいと思います。