ブック・レビュー 『希望の数字3・16』

『希望の数字3・16』
川端光生
新生キリスト教会連合・キリストの栄光教会牧師

大人向きの童話のように語りかけるぜいたくなキリスト物語

 著者は、百冊を越える著作をもつアメリカ・テキサスの牧師。物語作家らしく、本書でも、自分の身近な体験例や見聞きしたことを用いて、大人向きの童話のように、読者に語りかけていく。

 ヨハネの福音書三章一六節というただ一節を豊かに繰り広げる、ぜいたくなキリスト物語である。

 著者は、独り子をお与えになったほどの神の愛を、楽観的なほどに信頼しきって、軽妙に優しく、しかし、ときに重厚に解き明かしていく。

 オークヒルズ・キリスト教会のホームページによると、著者と編集者の間で、互いに納得のいくまで、原稿の加筆修正を繰り返したそうで、構成、内容、言葉遣いは洗練されたものとなっているという。

 「人生はときとして、取り返しのつかないほどめちゃめちゃになってしまったように思えることがある。けれども大丈夫、きっとうまくいく。どうしてわかるかって? それは*神が世を愛された*からだ。しかも――神にはなんの必要もないから、あなたは神を疲れさせることはない」。

 「罪を胸に溜めこむことで、ぼくたちの心は頑なになる。罪を告白することで、ぼくたちの心はやわらかになる」。

 「長い旅で頑なになって、ぼくたちはみもとに行く。『この心をなんとかしていただけますか』と、ぼくたちは訊ねる。主はうなずくと、微笑んで言われる。『では、わたしの心と交換しよう』と……」。

 「あなたの役割は、信じてゆだねることだ。あなたにできないことをわたしがするのだと、信じることだよ」。

 サーッと読めてしまうが、不意を突かれる言葉に随所で出くわすので、斜め読みはできない。もうここらでいいだろう、と読みさすこともできない。

 ただ、アメリカ人特有の気恥ずかしくなるような言い回しに、日本の古いオジサンはちょっと引いてしまう場面もあるが、馴染んでいる人たちには心地よいかもしれない。