ブック・レビュー 『主の備えられた道を』
――ウガンダ医療宣教の記録

主の備えられた道を――ウガンダ医療宣教の記録
堀内 顕
日本国際飢餓対策機構 理事長

ウガンダに身を投じた英国人医療宣教師の奮戦記

「過去五年間の様々な出来事は、偶然そうなったとは思えないんだよ。すべての出来事に、神さまの指紋を見るんだ。神様がすべてやってくださったんだよ」(316頁)

 アフリカのキリング・フィールドと呼ばれるルウェロ三角地帯のど真中に建つ、荒れ果てた農家。もちろん水道、ガス、電気などきていない。それがアイルランドで平和に暮らしていた三十五歳、妻子持ちの男性医師がぶらりと訪れたウガンダで、荒廃、破壊、絶望をまのあたりにし、医療宣教師として住み着いた家である。それから五年間、家に住み着いていたネズミやヘビとの格闘から始まり、昼夜を問わずにやってくる人々を診察し、治療を続けたクラーク医師はまた、多くの出会いと別れに涙を流す。

 ところでウガンダで避けて通れないのが、エイズ問題だ。資料によれば、世界中のエイズ患者は四千万人、その七割以上がサハラ以南のアフリカ居住者であるという。

 クラーク医師一家が、アフリカでの新しい環境に慣れずに四苦八苦していたとき、いつも側にいて助けてくれた、地区ヘルスワーカーの一人、アンドー。キリストと出会い、罪を悔い改めて人生をやり直そうとしたアンドー。しかしクラーク医師が彼に対してしなければならなかったこと。それがエイズ感染の宣告だった。新しい人生のパートナーの胎の実を、クラーク医師が取り上げたちょうどその瞬間、アンドーは静かに息を引き取った。

 そしてクラーク医師自身も、睾丸ガンに侵される。しかし主は、彼になすべき仕事を残しておられた。辛い治療を経て、快癒後、ウガンダへ戻り、今も奮闘中である。

 文章もすばらしいが、緑内障に罹りながらも翻訳された飯田真知子さんの名訳が本書をさらに輝かせている。三百ページ余を私は、一気に読み終えた。途中手に汗を握ること二回、涙をポタポタ落とすこと四回、そしてお腹を抱えて笑うこと数限りなし。読み終えた人はきっと、自分の人生に記された神さまの指紋を思い起こして、感謝をささげずにはいられないだろう。