ブック・レビュー 『ザ・クロス』

『ザ・クロス』
井上 誠
単立 鶴川キリスト教会 牧師

十字架から主の語りかけが聞こえてくる

 二千年前に十字架にかかって下さった主のメッセージは、今を生きる私達の心にその愛を体験させる。その深さを感じさせてくれる書。それだけでない。なお余りある恵みの余韻をいつまでも消えない夕焼けの様に心に残す書、それが『ザ・クロス』である。

 十字架の主イエスは、妻に贈り物をするために不慣れなショッピングをするご主人にも語りかける。十字架という贈り物にどれほどの時と痛みとが伴っているのかを。

 十字架の主は、自分の車が追い越された悔しさを獣のようになって追い抜いて晴らそうとするドライバーの目にも映しださせる。人の内の罪という「野獣」が、神の子の愛という「美女」のくちづけによってのみ変えられた十字架の丘を。

 懇願に負けた給仕長が持ってきた場違いのジャケットのおかげで食事を許された男性の耳元で主イエスはささやく。キリストというたった一着の衣の故に私達は神様の御前にでることが許されたことを。

 「成長したからもう結構!」と言って父親を無視し去っていく娘を、いつか過ちを認め帰ってくるその愛娘を、幼き日のクリスマスイブの晩の様に優しく迎える父を想い起こすすべての人に、十字架から主は語りかけて下さる。「わたしはあなたがいつ帰っても迎えてあげるよ」と。そして著者マックス・ルケードは結ぶ。「すべてはあなたのためだったのだ」そして「ローマ兵が釘づけにしたのではない。主が釘づけられることを望まれたのだ」と。

 十字架の主のことばが心にしみこんでくる。一つひとつが現実生活の真中でルケード氏自身が聞き取った十字架の主のメッセージ。だから心にスッと入ってくる。心からお薦めする一書。嬉しいことにフォローアップ版も発売された。「ただあなたのために」という眼差しからまとめた伝道用である。心からあなたが薦められる書となろう。