ブック・レビュー 『しなやかな心で生きる 良き人生の終焉を迎えるために』

『しなやかな心で生きる   良き人生の終焉を迎えるために』
嵐 時雄
日本同盟基督教団 国立キリスト教会

死を覆う希望のメッセージ

 最近は重篤な病気でも本人への病名告知が珍しくなくなってきました。医学、医療技術の進歩によってもたらされた治療環境が、患者本人とその家族に相当の安心感を与えるようになってきているからです。しかしそれでも、多くの方が病気のその先に見え隠れする死の影に不安を抱いているという現実はあります。
本書は副題に「良き人生の終焉を迎えるために」とありますように、必然的に死と向き合わなければならない私たち、すべての生ける者へのメッセージ集となっています。全体は二頁ないし三頁の短いメッセージ二十篇によって構成されていて、その目指すところは「希望」の発見です。
「はじめに」のところに記された次の文章が、本書の全体像を示しているように思います。「末期がん患者への医療を『ターミナルケア(終末医療・末期ケア)』と言います。『ターミナル』は『終点』を意味しますが、同時に出発の場所でもあります」
最愛のご子息を六歳で亡くすという苦しい経験を持っておられる著者が、読者の心にていねいに希望の根拠を伝え、「あなたも出発しませんか」と語りかけています。
表紙の帯に「葬儀、偲ぶ会の参列者に手渡したい、永遠への希望のメッセージ」と記されていますが、ハンカチやプリペイドカードよりはるかに意味のある記念品となるでしょう。愛する者を失うという癒しがたい傷を負っている方へ、小さなプレゼントに添えて差し上げるのはいかがでしょうか。そっとメールボックスに入れておく、そのような用い方もできる本です。
もちろん、普段の礼拝、伝道会に来られた求道者の方に手渡したい、できれば受付に常備しておきたい一冊でもあります。若い人々、とくに中学生、高校生にいのちの尊さを知ってもらうためのテキストとしても役立てることができると思います。