ブック・レビュー 『かみさまってどこにいるの?』

『かみさまってどこにいるの?』
有野道子
単立 沼津港町教会教会員

あなたならピップの質問にどう答えますか?

 表紙の素朴な絵とかわいらしい「手のひらサイズ」の絵本。期待をこめて絵本を開いてみると、ピップという質問好きな少年の「かみさまってどこにいるの?」とお母さんに尋ねるところからストーリーが始まります。

 「天国ってどこにあるの?」「天国ってどれくらい大きいの?」「死んでしまった人はどこに行くの?」とピップは数々の質問を投げかけていきます。お母さんに尋ねているわりには、ピップは一人で答えを出してしまいます。

 現在、私は教会学校の奉仕をしていますが、子どもたちから飛び出してくる自由で率直な質問に、ときどきはっとさせられます。先日、暗唱聖句で「この世と調子を合わせてはいけません」(ローマ人への手紙十二章二節)と暗唱した時、ひとりの女の子から「この世でなかったら、あの世と調子を合わせるってこと?」「あの世」という表現に思わず周りにいた先生たちは顔を見合わせてしまいました。子どもの質問にどのように応じていったら良いのかを考えさせられたひとこまでした。

 この絵本は、大人である私たちがどのように子どもの疑問に対応していったら良いのか、ということにも示唆を与えてくれます。

 ピップのお母さんは、ピップの導き出した答えに、「まったく子どもだから仕方ないわね……」と言うのではありません。ピップの質問に対して温かい眼差しで見守りつつも「そうね、そうね」と頷きながら、時折適格なヒントを与えているのです。自由に素直に質問するピップと、それを見守るお母さん。子どもの想像力の背後にある温かい大人の眼差しをも感じとることができます。

 大人が忘れてかけている大切なことを思い出させてくれる、ほんのり心が温まる絵本でした。ぜひ、みなさんもピップの質問に耳を傾けてみませんか、そしてご一緒に考えてみませんか。