ビデオ 試写室◆ ビデオ評 47 『本田弘慈追悼記念ビデオ2本セット』

本田弘慈追悼記念ビデオ2本セット
古川 第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会 牧師

ドキュメンタリーとドラマで描く庶民のカリスマティック・リーダーの半生

「カリスマティック」という言葉が流行って、4、5年になるでしょうか。キリスト教会では昔から使われ、ビリー・グラハムは「カリスマティック・リーダー」と言われましたが、そういう人は日本にもいました。本田弘慈牧師です。今回は、87歳で、先頃天に召された本田弘慈師の召天を記念して、復刻された2本のビデオをご紹介します。

『一粒の麦 地に落ちて』は、本田師自身が、中学生の時の回心、親の迫害、伝道者への道、さらに国家の弾圧下での戦い、子どもの死、伝道の実りなどを語り、映像が次々に紹介されるというドキュメンタリーです。その中で特に、戦中の警察から「天皇が偉いか、キリストが偉いのか?」という質問の前に立たされた時、夫婦で山に登って一日中祈ったというエピソードが、強烈でした。「自分はいいが、家族や親戚のことを考えると、何と言ったらいいかわからない」と思っていた時に、奥さんが「私たちが一粒の麦となって、死ねばいいんです」と言われて、はっきりとキリストを告白する決心がついたと言います。そのはっきりした態度が幸いして、すぐに解放されたということでした。深く教えられました。

 また『ここに愛がある』は、本田師の半生がドラマ化されたものです。料亭の様子や、当時の教会や学校の様子が、よく描かれています。彼は成績がよく、学校の購買部の学生主任をしていました。小遣いをもらえなかった彼は、帳簿を書き換え、購買部の売上金を使い込んでしまいます。ある時「バイブルクラスにきれいな女の子がいる」という友達の誘いがきっかけで教会に行き始めます。そこでいきなり読まされた英語の聖書の言葉が、「心のきよい者は幸いです。その人は神を見るからです。」この言葉を読んでから心が苦しくなり、それを誰にも打ち明けられないまま卒業式を迎えます。模範生としての表彰状を受け取って帰るとき、心の痛みに耐えかねて、牧師を訪ね、罪を告白します。そこで悔い改めの祈りをささげ、校長先生に表彰状とお金を送り返します。「ヤソは許さん!」と父親は怒り、母親は嘆き悲しみますが、彼は強い決心をもって家を出て、献身の時を待ちます。

 やがて伝道者となり、ある伝道会の決心者の中に、父も母もいました。手を取り合って、「わしが悪かった」「お父さん、ずっと祈ってたよ」という姿は、すばらしい光景です。

「本田先生が伝道会を開くと、近くで屋台を出していた鯛焼き屋のおじさんが、店をたたんで聞きに来るんだよ」と、信仰の先輩から聞いたことがあります。誰にでもわかる、しかも面白く真剣な説教は、大衆の心をつかみました。

 ある日、電車の中で、悩める高校生の私に、「古川君、君は将来有望な青年や。しっかりたのむでぇ!」と言って肩をたたいてくださったときのことを、今、思い出しています。