ウツと上手につき合うには 第7回 生活をシンプルに

斎藤登志子

この欄でいつも「のんびりしよう」とか、「ほどほどに」などと書いている私ですが、先日、娘から「お母さんはいつもせかせかしている」と言われてしまいました。なかなか思っているように行動するのは難しいものです。

年の近い子どもを四人育ててきたからでしょうか。私は常に動き回っていないと時間がもったいないと感じてしまうようです。実際は、子どもたちもかなり巣立っていったので、もうせかせか動き回る必要はないのですが、それでも身についた習性というのはなかなか抜けないものですね。そのような姿が、娘の目には「せかせかしている」と映るのでしょう。

ウツのときは何もできませんからおとなしくしているのですが、ウツが軽快するとすぐに動き回りたくなります。そして、調子に乗って動き回ると必ずストップがかかります。体調が悪くなるのです。以前はアレルギーがひどくなり、胃痛や頭痛に見舞われることもしばしばでした。今回は、めまいと眼精疲労です。

おそらくオーバーワークなのでしょう。体が言うことをきかなくなって初めてブレーキをかけるというのがいつもの私です。以前も書きましたが、ウツになる人は自分に課する要求が多すぎる、もしくは、高すぎるのです。だから、ウツに陥らなくても体のほうが悲鳴を上げるのでしょう。

今回も気分が悪くなったときに、神様から傍点つきのゴシック体の大きな文字で「やめなさい!」と止められている気がしました。

活動を減らしなさいという警告なのでしょう。この世の風潮は、何でもより多く、より速く、より効率よくあることをよしとしますが、それに逆らう生き方が求められているのだと思います。

それは、ある意味では貪欲を慎みなさいということでもあるでしょう。現代社会は貪欲です。そこに生きる私たちも否応なしにその影響を受けています。今あるもので満足せず、もっともっとと求め、今の自分に満足しないことは貪欲のとりこになっているのです。

引き算の人生

人生は足し算だと思っていました。
学校へ行って新しいことを勉強し、
できなかったことができるようになる。
友達をつくる。
知識や技術を身につける。
働いてお金をもうける。
服を買う、車を買う、家を建てる。
足りないものは足していく。

知識、学歴、資格、お金、持ち物、人間関係、
なんでも多ければ多いほどいいと思っていました。
人生は足し算でした。

うつ病になって、なにもできない惨めさを知りました。
仕事はおろか、起き上がることもできません。
電話に出るのも、人に会うのも苦痛になりました。

今までできたことが、できなくなりました。
やりたくてもできないこと、
どんなにしたくても、やってはいけないことも増えました。
それから人生は引き算になりました。
たくさんあることの中から、
ほんとうにしなければならないことだけを残す引き算です。

大切なことと、どうでもいいこと、
どうしても私がしなければならないことと、
ほかの人に代わってもらってもいいこと、
時間をかけてしたほうがいいことと、
手を抜いてもいいこと、
少しずつ見分ける知恵がついてきました。

わたしにしかできない、ひとにぎりのことを心をこめてする。
引き算の人生も、悪くないと思います。

(『傷つきやすいあなたへ』木村藍 著、文芸社より)

たしかに、どうでもいいことにこだわりすぎて、人生をややこしくしているのかもしれません。もっと生活そのものをすっきり、シンプルにしたいものです。持ち物は少なく、付き合いも必要最小限にしましょう。人の目や評価にふりまわされるのではなく、本当に自分がしなければならないことだけに専念できるように生活を整理してみませんか。きっと、もっと自由で平安な生活が送れると思います。

 

ウツと上手につき合うには 第8回 自己理解と自己洞察を