これって何が論点?! 第12回 「国会」がよくわからない!

星出卓也
日本長老教会
西武柳沢キリスト教会牧師。
日本福音同盟(JEA)社会委員会委員、日本キリスト教協議会(NCC)靖国
神社問題委員会委員。

今年一月二十四日に召集された「一八六回国会」が六月二十二日に閉会。第二次安倍政権にとって二度目の「通常国会」でしたが、衆議院、参議院ともに与党が過半数以上と、八年ぶりにねじれが解消されてしまっただけに、提出された法案の九七・五%が成立することとなってしまいました。

Q 「通常国会」っていつから?
日本国憲法五十二条に「国会の常会は、毎年一回これを召集する」とあり、この「常会」が「通常国会」です。国会法では「毎年一月中に召集することを常例」(二条)とし、「会期は、百五十日間」(十条)と定められています。国の予算が単年制度(一年ごと、四月一日~三月三十一日)のため、年一回は審議を行う必要があるのです。そのほか、内閣の決定、または衆参いずれかの議院の四分の一以上の要求で臨時会(臨時国会)を召集しなければなりません(日本国憲法五十三条)。これは、毎年秋頃に開かれています。国会法十二条で常会は一回のみ、臨時会、特別会(特別国会)は、それぞれ二回まで衆参両議院の議決で延長が可能です。常会(通常国会)は、毎年一月の内閣総理大臣のスピーチ、「施政方針演説(政府が行おうとしている政策の基本方針)」から始まり、予算の承認、諸法案の決議が主な議題です。

Q今回の通常国会ではどのような法案が採択されたの?
安倍政権は、第一次(二〇〇六~二〇〇七年)のときから「戦後レジーム(体制)からの脱却」をスローガンとし、日本国憲法の改正(改悪)を目指してきました。まずは「軍備化に関する法整備・教育改革・靖国神社参拝」の三本柱を大きな目標としています。今回の一八六回通常国会では、この目的に沿って、多くの法案が成立しました。
武器や関連技術の輸出を厳しく制限してきた「武器輸出三原則」を全面緩和し「防衛装備移転三原則」に改定。「国民投票法改正案」も採択され、最低投票数は規定せずに、低いハードルでの改憲ができるようにしたこと。公務員や教育者の国民投票運動の意見表明に対し、制限を加えることに道を開いたこと。教育委員会や教育長を首長の管轄下に置く「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」が成立し、政治が学校教育内容に介入できるような制度改革をしたこと。これに加えて戦後一貫して現憲法九条下では認められないとされてきた「集団的自衛権」を国会審議も通さず、内閣総理大臣はじめ全大臣による「閣議決定」により〝解釈変更〟し、容認できるように推し進めたこと。
政府が提出した法案成立率は九七・五%の快挙であったと冒頭で書きましたが、これには、与党である自民党が数に頼んで、有無を言わさず法案を押し通す「強行採決」を多発したことが背景にあります。議会制民主主義の根幹は、少数の意見にこそ耳を傾け、合意を目指す努力抜きには成り立たないのに、この根幹が崩壊し始めています。
特にひどかったのが、「国会法」「参議院規則」の改正案、「参議院情報監視審査会規程案」の三法案の強行採決でした。これらは、昨年末に成立した特定秘密保護法に基づき、戦後初めて国会に〝秘密会を新設する〟という、国会の在り方に関する極めて重要な法案でしたが、この法案が提出されたのは会期が終わるぎりぎり実質二日前、しかも七時間しか審議の時間がありませんでした。審議の過程で問題点がいくつも明るみに出た矢先、与党議員から「審議を打ち切り、速やかに採決する」の動議が出され、議場騒然のまま強行採決されました(参議院HP「インターネット審議中継」六月二十日「議員運営委員会」の最後で見られます)。この実態は、特定秘密保護法案を審議した昨年末の「国家安全保障に関する特別委員会」(十二月五日)の強行採決と同じでした。怒号が飛び交い、委員長の発言でさえも何一つ聞き取れない状態の中、形式的には「採決」したことになっている。衆参のねじれ解消が、このような他の意見に全く耳を傾けず、数におごった政治を行う結果となってしまったことを痛感させられた一八六回通常国会でした。
今度は、集団的自衛権を閣議決定で容認したことに伴い、軍備化に関する法案提出準備が、今秋の臨時国会に向けて国会閉会中も進められてゆくでしょう。「戦争は国会から始まる」という危機を感じつつ、不断の努力をもって国会の動向を注視していく必要を覚えています。
西川重則著『わたしたちの憲法 前文から103条まで』(いのちのことば社、2005年)※絶版
推薦図書
◆ 国会の審議の録画はホームページから見ることができます。
「衆議院インターネット審議中継」 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
「参議院インターネット審議中継」 http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php