『赤毛のアン』と聖書のことば
―『アンが愛した聖書のことば』著者インタビュー ◆BOOKレビュー
アンへの愛にあふれた、さわやかな一冊

ちょうどこの四月から、NHKの朝の連続テレビ小説で「花子とアン」が放送されている。『赤毛のアン』を日本に紹介した翻訳者、村岡花子の生涯を描いたものだ。このドラマをきっかけに、今年はとりわけ多くの人が『赤毛のアン』を手に取ることになりそうだ。そんな折、とてもいいタイミングで本書が出版された。「『赤毛のアン』を大人読み」という副題も魅力的だ。
子どものときに好きだった本を、大人になってあらためて読み返してみると、意外な発見がたくさんある。人生経験を積んで、子どものときとは違う視点から登場人物たちを見るようになるものだし、かつては気づかなかった感情の機微に気づいて、作品のイメージが変わることもある。私事になるが、自分自身いま「百万人の福音」でヨハンナ・シュピリの『ハイジ』の新訳をやらせてもらっており、その中で日本でのアニメ化の際に人物像がかなり変えられていたことなど、さまざまな発見をしているところだ。
本書はテーマ別にわかりやすく十二の章に分かれており、それぞれの章の始めに聖書のことばが添えられている。『赤毛のアン』の場合、あらためて聖書のスピリットが作品世界に溶け込んでいるんだな、と感じさせられた。原作者のモンゴメリが牧師夫人なので、ある意味、当然のことなのかもしれない。ただし、アンは決して信仰の優等生ではないと、本書の著者は指摘する。このことに、はっとさせられた。
アンはかんしゃく持ちだし、おっちょこちょいだ。見えっ張りなところもある。でも、さまざまな欠点を持つアンだからこそ、読者は共感する。アンの成長を、共感をこめて見守ることになる。そしてアンだけでなく、アンの周囲の人々も成長していくことを、著者はさらに教えてくれる。
アンへの愛にあふれた、さわやかな一冊。原作者や翻訳者についての理解も深まり、だれかと分かち合いたくなる。そして、さらなる「大人読み」へといざなわれる。

『アンが愛した聖書のことば
―「赤毛のアン」を大人読み』宮葉子 著
四六変判 1,100 円+税