『聖書ものがたり絵本』待望の第1巻いよいよ登場! 物語性を大切にしたオリジナルの文と画

『聖書ものがたり絵本』
武井 博
横浜カルバリーチャペル 牧師

物語性を大切にしたオリジナルの文と画

この本の文を頼まれたときの印象はいかがでしたか?

まず「これで念願がかなう!」と喜びました。私は、かつてNHKテレビの「ひょっこりひょうたん島」のディレクターとして、五年間番組を作ってきました。その放送が終わった直後から、今度は童話を書き始めました。それから約十五年間、ディレクターを続けながら三十冊前後の童話や絵本を出版しました。

その後、思いもよらない人生の大転換でクリスチャンになり、献身して牧師になりましたので、童話や絵本の方は絶筆状態でした。しかし、その執筆体験を、今度はキリスト教の分野で生かす機会はないか、そうひそかに望んでいました。そこへ、この絵本のお話をいただき、願ってもないことと感謝した次第です。

制作上で気をつけたことは何ですか?  

とにかく、単なるダイジェストにはしたくないと思いました。聖書のテーマをしっかりとおさえた上で、物語性を重視したいと思いました。「次はどうなるか」と、期待を抱いて読み進めるものにしたいと思いました。それと同時に、単なるお話ではなくて、その物語に込められているテーマはしっかりと伝えたい、そんな思いで執筆しました。

構成について気をつけたことは?  

聖書の主な流れをしっかりと伝えたいと思いました。断片的な、子どもさんに受けそうなところをピックアップして構成する、ということは避けたいと思いました。

何といっても、聖書の情報は膨大です。その中から、どうしても伝えたいところを選び抜くことは、大変なことです。しかし、メインの流れを切ってしまったら、聖書の本質的な内容は伝えられません。その点と、字数の少なさとの戦いでした。

文について、何歳くらいを対象にしたのですか?

読み聞かせる、という場合は、幼稚園、保育園ぐらいからの子どもさんを想定しました。また、子どもさんが自分で読むという場合は、小学校三年生ぐらいから、と考えて文章を書きました。また、親御さんが読んでくださることを考えて、“子どもだまし”風ではない文章を心がけました。

巻末の解説には、どんな役割があるのですか? 

この部分は、親御さん向けに書きました。子どもさんと一緒にこの絵本を読まれるとき、一応の聖書についての知識が必要だと考えたからです。子どもさんから、質問された場合など、この文章を参考にしていただきたいと思ったのです。また、初めて聖書を読まれる親御さんには、ガイダンス的な役割を果たすとも考えました。この文章を読まれて、大人向けの聖書に挑戦されるご父兄が多数出てこられることを期待します。

小林豊さんの絵について、どんな印象をお持ちですか?

素晴らしいです。一流の画家が全力で描き上げられた渾身の作です。子ども向けだから可愛くとか、子どもが喜びそうな絵に、などと考えられないで、一人の画家が「これで勝負!」という意気込みで描かれた傑作です。克明に描かれて、特に見開きページのスペクタクルは圧巻です。

制作で苦心した点は?  

言葉をなるべく具体的に書くことです。例えば、「家畜」と書けば、大人なら、多分、羊、牛などを思い浮かべるでしょう。ところが、子どもの場合、イメージがどれだけ浮かぶでしょう。そんな場合、「羊や牛やニワトリを飼っていました」とすれば、イメージがはっきりします。そんなところも、子どもたちの目線で書くように心がけました。

最も苦労が多かったのは、ページ数の少なさ、文字数の少なさです。しかし、これは絵本の宿命ですから、仕方がありません。

全四巻の完成に向けて、抱負をお聞かせください。


 絵本だからテーマを軽くしたり、子ども向けだから表現をかわいくしたりせず、クリスチャンとして伝えたい内容をしっかり伝える聖書絵本にしたいと思っています。

 何よりも、多くの方々に読んでいただきたいですね。この絵本を読んだ子は、将来、絶対に、少なくとも凶悪犯罪なんかに手を染めない、そんなことを期待しながら、この作品を作っていきたいと思っています。




武井博 
プロフィール 1936年、埼玉県生まれ。早稲田大学文学部卒業と同時に、NHKに入局。子ども番組の企画・演出にたずさわる。代表作として「ひょっこりひょうたん島」「おーい!はに丸」などがある。また、児童文学作家としても活躍、『はらぺこプンタ』(講談社)などを出版した。93年から8年間、玉川大学文学部講師に。カルバリー聖書学院卒業後、99年から横浜カルバリーチャペルの牧師を務める。