CD Review ◆ CD評 「サフランのうた」

「サフランのうた」
国分友里恵
歌手・作詞家

くつろぎと安らぎの時間

 多くの方々に親しまれてきた星野富弘さんの作品に、岩渕まことさんが曲をつけて歌う「やさしさコラボレーション」シリーズの第三弾、完結編です。岩渕さんの音楽に彩られた星野さんの詩画の世界を改めてじっくり味わいました。ひとつひとつ、それぞれのシーンが物語の様に伝わってくる、言葉が優しく降り積もってくる、そんな感覚に浸りました。日本語の美しさが、上質な読み聞かせのように心にストレートに入ってくるのです。聴き終わった後、音楽であるのにもかかわらず、本を読んだような気持ちにもなりました。

 岩渕さんと奥様である由美子さんとのデュエットは、ナチュラルで耳ざわり良く、アコースティックなサウンドと相まって、くつろぎと安らぎを供給してくれます。

 CDを聴きながら、星野さんの詩画をじっくり眺めていると、どこか日帰りの旅にでも出たような気持ちにもなります。私の知らない植物、見慣れたお花、葉っぱの細部にしみ通るような言葉が歌となって流れてくる。聴く人に、それぞれの心の世界を楽しみ、ストーリーを重ね合わせる時間を作ってくれます。

 また、全体を通して岩渕さんの人柄を感じさせる様な曲であり、音作りになっていると思います。星野さんの描く文字の形にまで行き届いた愛が感じられます。

 どの曲も訴えるものが豊かでしたが、個人的には「椿の実」「たいさんぼく」の詩が強く印象に残りました。ただ目で読むのとはひと味もふた味も違い、歌で語られる時、言葉は深く、そして楽しく心に広がってきました。「椿の実」には、短い語りが挿入されていて、いいな、この人は誰だろう?と、思ったら、星野富弘さんご本人の声でした。タイミングもニュアンスもばっちり。嬉しい驚きです。

 世の中の流れは目まぐるしく、忙しさにかまけている内に時間さえ見えなくなって行く人あり、その中で取り残されて行く人々も多くあり……。是非ゆったりと椅子に座り、手にとってじっくり味わって聴いて頂きたい一枚です。

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