ずっこけ宣教道 第9回 韓国篇

松本望美
北朝鮮宣教会所属

 以前、私は「天国へのずっこけ階段」という連載を書かせていただいていた。それは、韓国に住んでいるときに遭遇したカルチャーショックなどを綴ったものであったが、今回「韓国篇」として、日本にやって来た韓国人について綴ろうと思う。

 毎年、夏になると韓国から宣教チームがやって来る。「青年チーム七十人」の時もあるし、「アジュンマ(おばさん)チーム三十人」の時もあり、どちらも日本人にキリストの愛を伝えようと燃えて上陸される。

 さすがに七十人の青年のときには、修学旅行時の先生さながら「点呼!」と叫びながらの誘導だし、アジュンマチームのときには、添乗員のように走り回る。

 アジュンマチームが関西にやって来たとき、空き時間に「京都に行きたい」と言う。

 そこでバスを借り、「金閣寺を見たい」と言うので向かった。

 アジュンマたちにはお気に召さなかったのか、「これは、百済のものね? 韓国が日本に伝えてあげたものだね」とおっしゃり、みなさん素通り……。

 次に二条城に行ったが、なんでも「自称・日本通」のアジュンマがいらっしゃるようで、韓国語で説明をし始めた。「みなさん、これは天皇陛下の別荘です。」

 ……え? 天皇? 家康の京都での宿所ですけど……? と思ったものの、ここで目上の人に物申すのはヤバい。

 しばらく歩くと、チョンマゲを結った家臣たちのロウ人形が出て来た。するとアジュンマたちは「なるほど。天皇たちは暑い日にはこういう格好をするのね」と感心していた。

 ランチには、近くのレストランに予約を入れている。ランチメニューは、スパゲティとスープにサラダ、そしてパンがついている。すると、アジュンマたち「パンは好きじゃないから、ご飯に替えてもらって!」と言う。「スパゲティとご飯ですか?」と聞くと、「ケンチャナヨ~!(大丈夫!)」とおっしゃる。「え?!」と驚くウエイターだったが、なんとか交換してもらった。

 ご飯が運ばれると、リーダーのアジュンマがみんなに言った。
 「じゃあ、みんな持って来たコチュジャン出して。」
 アジュンマたちはバッグから飛行機内でもらったコチュジャンのチューブを取り出した。
 慌てた私は「待って~!」と叫んでいた。
 アジュンマ達は、白いご飯にそれを混ぜて、ビビンバにしようとしていたのだ。
 「え? ダメなの?」
 「ええ、匂いが……。他のお客様もいらっしゃいますので」と私が答えると、アジュンマ一言。
 「じゃあ、悪いけど、バスの中にキムチのタッパー置いてきちゃったから持って来てくれる?」